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「これは失敗しました…」
「あーあ面白かった。それで、どうしたんですか?」
ひとしきり笑った加賀美が、困惑している磯部に話の続きを促す。
「はい。そんなある日、ある事件がきっかけで柏様は標的の叫びを聞いたのです。その日から柏様は刃圧を飛ばさなくなりました。標的に直接触れるコトで、よりハッキリと標的の声を聞けるのだとか申しておりました。それからはもう、毎日のように泣いておられます」
「ふーん…。標的の声かぁ、聞こえると凹んじゃうなぁ」
加賀美は唇を尖らせて、考え込むように呟いた。
「加賀美様が聞かなくてはいけないことはございません。変わったお人なのですよ。柏様は」
磯部は加賀美の肩をポンと叩いて立ち上がる。
「さて、そろそろ参りましょうか」
またしても、磯部は優雅な仕草で加賀美に手を差し伸べた。
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