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加賀美が柏を迎えに行くと、黒い袈裟を着た天を突くような大男が、目頭を摘まんで天を仰いで突っ立っていた。
「あー。柏さんまた泣いてるー」
からかうように声をかけた。
「うるふぇズズッ…、おまふぇなんふぁひ、あふー」
「もー、泣き虫だなぁ。あんまり泣いてると、次、置いて行っちゃいますよー」
加賀美は柏に向けて走るポーズだけして見せた。
「なに!!それはいかーん!」
ものすごい勢いで走り出し、加賀美を追い越して金斗雲に乗り込んだ。
「柏様、そんなに慌てなくとも、柏様が乗るまで出発いたしませんよ」
磯部は優しい苦笑いで柏に振り向く。
「柏さんって単純なんですねー磯部さん」
後から乗ってきた加賀美が磯部に同意を求めるが、磯部は苦笑いだけで答えられなかった。
「『ねー』ってお前らいつの間に仲良くなったんだ」
「気づいた時にはでございますよ。柏さん」
加賀美が磯部の口調を真似て答えると、柏は「知らん!」とそっぽをむいてしまった。
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