教室の戸を開けたら、そこには......

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 その後、授業中も休憩時間もそわそわし、プレゼントを渡すタイミングを見計らっていた。  けれど、いつも友達に囲まれている溝端くんに近づくことは出来ず、他の女子からチョコレートを受け取る姿をただ黙って見つめるだけだった。  溝端くんは時折私をチラチラと見つめ、気にしているかのようだったけれど、自分から声をかけることはしなかった。  結局、下校時間を迎え、サッカー部の練習がある溝端くんを待つために教室でずっと待っていた。  にもかかわらず、部活の友達と連れ立って帰る後ろ姿に声をかけることが出来ず、チョコレートを渡さないまま自宅に帰ったのだった。  それから1週間後、多恵ちゃんから『溝端が別れようって言ってる』と伝えられた。  私は黙って頷いた。  私たちの何もない短いお付き合いは、それで終わった。  3年生になると溝端くんとはクラスが離れ、別々の高校を受験し、それからもう...  ---二度と会うことは、なかった。
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