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中学生の私は肩までの髪を揺らし、長袖のセーラー服を着ている。
全身紺で、襟に真っ白な線が一本入ってるだけで、細長い黒いリボンが小さくついている地味なセーラー服だ。
早朝、なのだろうか......
まだ誰も登校していないようだ。
記憶を辿ってみても、私は早朝から登校するような生徒じゃなかったはずだ。
彼女がそわそわと見つめる窓は外気との気温差で曇っていて、そこからうっすら雪がチラチラと舞い降りているのを覗くことが出来た。
ツルツルとした木目に傷や少し汚れがある天板の机の横のフックに掛けられた補助バッグに、彼女の視線が落とされる。
そこから見えた真っ赤なリボンを見た途端、私の心臓がトクン...と音をたてた。
---それは、溝端くんに渡すはずだった、バレンタインのチョコレートだった。
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