教室の戸を開けたら、そこには......

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 内向的で、もの静かだった中学時代。  なぜかそんな私に、彼氏が出来た。  ---それが、溝端くんだった。  11月に行われた校内の音楽コンクールの後、私が唯一仲良くしていた多恵ちゃんを通じてラブレターを渡された。  多恵ちゃんは私と違って男女分け隔てなく誰とでも話すことが出来、友達が多かった。  真っ白な封筒には何も書かれておらず、中には何の飾り気もない白い便箋が1枚入っていた。  四つ折りになった紙を開くと、そこには触れれば指に鉛筆の粉がつくぐらいの強い筆圧で書かれた実直な文字があった。  『水澤さんへ    好きです。付き合って下さい。   溝端 爽一』  シンプルでいて、ストレートに伝わって来る文章。  彼のことを深く知らないけれど、でも、とても彼らしいと思った。  文字が、こんなにも胸をドキドキさせることを私は初めて知った。  ドキドキするのは仕方ない......    だって、初めてもらったラブレターが、好きな人からだったんだから。
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