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「狼歩では、恋の媚薬にはなりませんか?」
狼歩さんは透き通る秋空を見上げて言った。
その横顔をきゅ~うんとしながら見て、
「そんな事ないよ?そんな事ない!狼歩さんは素敵だよ。優しくてかっこよくて。本当にプリンスみたいだもん。ただ……。ただね。」
「…………。」
しっかり目を合わせて。
「狼歩さんは、二次元からの魔法のプリンス。こうして居ることさえ魔法の世界でしょう?私にはもったいない位。二次元の世界だからこそ、こんな私……。」
「ストップ!!!」
今度は狼歩さんが私の口元に人差し指を立てた。
「蒼井さん?それは失礼極まりないですよ?狼歩はここに居ます。それに自分を卑下する人は狼歩は嫌いです!蒼井さん。
例えフィクションでも例え魔法でも現実でなくても今日は今日。蒼井さんと狼歩の時間なんですよ?蒼井さん、もっと自信持って下さい!」
「ごめんなさい。そうよね。私の一番悪い所。変わろうと思ったら変わらなきゃいけないのに……。」
私もスカイブルーの空を眺めて、目にいっぱいの涙を含んで微笑んだ。
でも、まだスカイブルーの空を見上げると私の壊れた瞳の中にはたった一人の映像しか映らないの。
壊れた瞳。
アキ姉様のムニオさんみたいに恋の媚薬を私の瞳に垂らしてしまった王子様。
狼歩さんは全て知ってる。
今日で私はその呪縛から……、恋の魔法から溶けるはずの日。
狼歩さんがくれた奇跡。
沢山の国を一緒に旅した。
そして、私の心の暗闇を晴らしてくれた。
だからこそ、今日は蒼井から狼歩さんへの贈り物の日なんだもん。
例え二次元でも狼歩さんに幸せを届けたい。
だからこそ、この壊れた瞳を蒼井自身の瞳に取り戻すんだ。
それが未来への第一歩だから……。
狼歩さんだけを見よう。
蒼井の瞳に映るもの。
それは狼歩さんだけ。
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