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「もぉ!!!蒼井さんは!涙ボロボロたらして、狼歩と目があってるはずなのに、どこへタイムトリップしてたのですか?もうどこへも行かせませんよ?」
と、蒼井のほっぺたを軽く2つ3つぺちぺちと挟んで、拗ねてみせた。
「ごめんなさい。」
「あはは。いいですよ。もう。楽しみましょう?狼歩はね。蒼井さんが楽しんでくれればそれでいいんですから。」
少し寂しそうに微笑みながら、狼歩さんは自然に蒼井の手を握りしめて歩き出した。
ひんやり冷たくて気持ちいい。
あったかくてぬるま湯の中の世界より、ずっとずっと生きているって感じられる。
狼歩さんがギュッと力を入れると、まるでお互いの脈が1つに感じられた。
トクン。
トクン。
さっきまでの苦しい脈打ちでなく、狼歩さんの優しさが手から流れ込むみたい。
また出そうになる涙をこらえて笑顔で、
「……。ありがとう。」
「いえ。どういたしまして。」
狼歩さんはウィンクした。
狼歩さんの顔は中性的で、ふんわりと緩やかに掛けられたパーマは狼歩さんの可愛さを引き立てている。
こんな素敵なプリンスがピーターパンのお陰で蒼井に魔法を届けてくれた。
(ねぇ?立ち直れってことでしょう?うん。前を向くよ。私。)
少し歩くとファインディング・ニモのアトラクション『タートル・トーク』が目の前に見えた。
「ねぇ?狼歩さん。ファインディング・ニモって知ってる?」
と尋ねると、
「もちろん!カクレクマノミのニモのお話でしょう?」
さすが狼歩さん!
知らない事ないのかしら?
「そう!そこに出てくるカメのクラッシュとね、このアトラクションでは実際お話出来るのよ♪」
と言うと、
「面白そうですね!行ってみましょう!」
と、手を握ったまま走り出した。
このアトラクションは一気にショースペースに入れる為、あっという間にショーを見る事が出来た。
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