女の園

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 夏休み。俺はローカル線の旅を一人満喫していた。  初めてやってきた駅は人っ子一人いない静かな空間で、疲れた心を癒してくれる落ち着いた駅だ。  周辺の探索を終えて再び駅に戻るとセーラー服姿の少女が一人座っていて、じっとこちらを見つめていた。  あんまりじろじろ見るものだから、 「俺の顔に何かついてます?」  と尋ねると少女はにっこり微笑んだ。 「お兄さん、この駅初めてでしょ」  やわらかい口調にそぐわない低く野太い声。  俺が固まってしまうと、少女(?)は左手で壁に貼ってある貼り紙を示した。 「ここは女装専用の駅よ」  たしかに貼り紙には「当駅は女装専用です」と書かれている。 「お兄さんもやってみる? 私、今日はセーラー服かメイド服かで迷ったからメイド服も持ってきてるの。もちろん胸に入れるパッドもあるわよ?」  俺はガクリと肩を落とし、隣駅まで歩く決意を固めた。
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