もう叶わないけど……

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教室の戸を開けたら、そこには懐かしい景色が広がっていた。 教室の大部分を占める並んだ机と椅子。 若干白いチョークの痕が残っている黒板。 大人が読むような難しい漢字はあまり使われていないであろう本ばかりが並ぶ本棚。 そして一番奥にあるのは生徒のよりは幾分も大きな先生のための机。 「帰ってきたな……」 夕日が窓から入り込み、教室中をオレンジ色に染め上げる夕方。 もちろんこんな時間帯、教室には誰もいない。 そのため俺の呟きに対する返事はなく、そのまま教室に広がるオレンジ色の中に溶けていった。 「ははっ……変わらないなぁ……」 教室の中へ歩みを進め、戸を背にして教室をぐるっと見渡す。 するとその風景は20年前と何ら変わらない、懐かしいもの。 どうしてそんな風に思うのかというと、俺はこの小学校、そして尚且つこの教室で学んでいた、所謂卒業生というものだから。 「しかし、自分が生徒として通っていた場所に今度は教師として通える日が来るなんて……」 そう、俺は教師として、ここに帰ってきたんだ。
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