もう叶わないけど……

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けれどそれだけなら不思議に思われる。 “どうしてこんな微妙な時期に??”と。 確かに普通教師が新しい学校へと転任するのは生徒達が学年を上がる春。 それなのに、今はもう秋に差し掛かろうとしている微妙な季節。 そんな時期になぜ俺がここへ転任してきたのかと言うと……。 「あれ??誰かいる」 「!!」 俺の思考があの日へと飛びそうになった瞬間、突然誰かの声が聞こえ、俺はそのまま現実へ逆戻り。 驚き、勢いよく声の主へ顔を向ける。 するとそこには、俺が入ってきた開けっ放しの戸の所に立ちこちらを不思議そうに見つめる一人の少年。 「お兄さんこんなところで一人で何してるの??」 少年は怖がる様子もなく俺に近付きながらそんな質問をしてきた。 「えっ??、ああ、そうだね、教室から見える夕日があまりにも綺麗で見とれていた、かな」 その少年の突然の登場に、俺は戸惑いつつも頭をフル回転させ、ゆっくり言葉を選びながら答えた。 明日までは新しく来た先生だということは秘密のため、“誰??”なんて聞かれなかったことはまだ救いではある。 まあ、この子は俺が新しく来た先生だなんて信じる様子は微塵もありはしないけど。 「俺も好きだよ、ここから見える夕日」 少年は俺の言葉にニッコリ笑い、パタパタと窓の方へ駆けていった。
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