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「君は……」
「“キミ”じゃなくて、“ゆうと”だよ」
声をかけた俺の言葉を少年は遮った。
「ああ、そうだね、ゆうと君か……」
「お兄さんの名前は??」
戸惑いつつも呼んだ名前に少年は満足そうに俺の顔を見る。
そしてまた俺が口を開こうとした瞬間、その前に少年は再び俺に質問をしてきた。
「偶然で驚いたけど、俺も“ゆうと”だよ」
「本当!?ねえねえっどんな漢字書くの??」
俺の言葉によって今度は驚いた表情をしたのは少年の方。
そして楽しそうに窓から離れて黒板に駆け寄ってくる。
「俺はね、こう書くの」
そう言って、少年は手にしたチョークで一画ずつ丁寧に書いていった。
少しして完成したそれを見て、少年は満足気に頷く。
決してものすごく上手いわけではない字で黒板に書かれたのは“優斗”という文字。
「ははっ、これまた偶然、俺も“優斗”」
「本当に!?」
優斗君から渡されたチョークでササッと黒板に書いた同じ漢字。
自分がさっき書いた字の横に並ぶ俺の字を、目を見開きながら食い入るように見つめる優斗君。
俺はその小学生らしい姿に笑いが零れた。
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