1・狩り-3

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杖を持った状態から、そのまま先端を戦闘を 続けているアランに向けると瞬時に体力値が 上昇しだす。 即効性がある分、回復量は多くはない。 それでも一度増加させておいてから、次には 発動させるまでの時間はかかっても、大きく 体力値が回服する魔法の呪文を唱える。 杖を大きく回転させ、先端を男に向けて発動 させると一気に体力値が全て回復した。 奴から距離を取った彼が、ほっとした少女に 声をかけた。 「ありがとう!それじゃ本気出しますか!」 琴音は一瞬耳を疑った。 「本気って・・・まだまじめにやってなかっ たんですか?」 少しイラッとしながらアランを責める。 しかし、男の余裕のある笑顔を見ると、溜息 を付いた後、つい口元を緩めてしまう。 「これから、この剣の凄いところを見せるか らさ」 悪びれる様子もなく、琴音を見ながら剣を構 えなおすアラン。 しかし、その一瞬のすきを奴は見逃さなかっ た。 奴がそれまでとは違う単純な、しかし体格差 を生かした効果的な攻撃をしてきたのだ。 体当たりだった。 アランも琴音も驚く暇もなかった。 剣を使うこともなく、激しい音とともに一気 に男の体が数メートル後ろに吹っ飛んだ。 激しく地面にたたきつけられた後、ピクリと も動かなくなる。 防具の強度が低ければ一発で即死だったろう が、まだ体力がかろうじて残ってるのが表示 された。 しかし、目の前に再び現れた男の名前は、赤 く変わり、激しく明滅を始めている。
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