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「アラン!!!」
瞳を大きく見開いて少女は叫びながら、慌て
て回復魔法を男に向けて発動させる。
(全回復の魔法がまだ使えないのに!)
連続して同じ全回復の魔法は使えないのだ。
そのためにはまだ数分の時間が必要だった。
今は、少しずつ時間をかけて回復する魔法し
か使えなないため、回復する前にアランが攻
撃を受ければ、回復が追いつかずに死亡して
しまうだろう。
勝利を確信したのか、奴は落ち着いた足取り
で倒れたままのアランに向かっていく。
(だめ!彼の回復が間に合わない!)
杖を握りしめたまま急いで考え、浮かんだ対
応パターンを行動に移した。
(ソロで狩りをしているつもりでいくしかな
い。
それで時間を稼いでアランの回復を・・・)
琴音が咄嗟に考えたのは、単独で狩りをして
いた頃のことだった。
魔法職では、相手に大きなダメージを与える
攻撃が出来ない。
その代わりに、相手の行動を制限したり、
自分の体力をこまめに回復させて、持久戦に
持ち込む。
粘り強く戦って、最後に勝利する。
その戦い方で何度もピンチを切り抜けてきた。
(私だって格上相手に勝ってきているんだか
ら!)
呪文を唱え杖の先でクロスを描く。
発動された魔法で瞬時に奴の周囲360度に
は固い金属の壁が出来る。
奴を閉じ込めることに成功した。
すぐに、内側から叩き壊そうとする激しい音
が聞こえてくるが、しばらくは大丈夫なはず
だった。
目の前の空間にデータを表示し、素早く視線
を走らせる。
(効果時間は10秒・・・
彼が戦えるまでに回復するのは・・・
あと60秒!
残り50秒、絶対彼に手出しさせないから!)
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