1・狩り-2

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二人がまた立ち止り、緊張した様子で辺りを 窺ったのは数十分後の事だった。 森の中から広い草原に出ようかという時にそ の声が聞こえたのだ。 強暴そうな声はあきらかに、先ほどよりも近 くから聞こえてきている。 男は警戒感を強めながら草原に出た。 声の大きさから大型の捕食獣ではなさそうだ と判断したが、それでも警戒に値する迫力の ある声だと感じていた。 余計な音を立てないよう気を付けながら、声 のした方へゆっくりと進む。少女もそれに合 わせて慎重に歩く。 急に前を歩く男が、右手の平を後ろに向けて から軽く握り下に降ろした。 この場に身を沈め、隠れろという合図だ。少 女は指示に従いその場にしゃがみ込んだ。 腰ぐらいまでの草が生えているため、二人の 姿は完全に隠れることができる。 「いたぞ・・・正面、200m先。単独で行 動してる。 琴音、奴を仕留めるよ」 「・・・はい・・・」 琴音と呼ばれた少女は、すぐに返事をしよう としたが、それが出来ないほど、口の中がカ ラカラに乾いているのに気が付いた。 慌ててつばを飲み込み、返事をした。 それに気が付いて、男が明るい調子で声をか ける。 「リラックスして行こうぜ。 相手は一頭だから、パーティーを組んでいれ ば、今までよりも簡単に思えるだろ?」
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