1・狩り-3

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慌てて琴音もアランの後を追う。 走りながら左手を体の前に伸し、一瞬のうち にその手に銀色の長い杖を出現させた。 両端に付けられた複数の綺麗な石が、キラっ と光った後、そのまま発光し続ける。 (私だって・・・) 少女は、落ち着かせようと、走りながら自分 自身に言い聞かせる。 迫ってくるアランの存在に気が付いた奴が、 雄たけびを上げると、彼に向かって走り出す のが見える。 見る見るうちに両者の距離が縮まっていく。 (私だって・・・、狩りならソロでこなして きたんだから、パーティだって慌てなければ 大丈夫!) ブーツの加速装置を目いっぱい使って走りな がら、落ち着いて落ち着いて、と何度も言い 聞かせる。 アランと奴の間合いが早くも縮まり、気合の 入った掛け声と共に、彼が剣を振り下ろした のが見える。 右上に構えられた剣が一瞬のうちに左下に現 れた、と思えるほどの鋭い剣の動きに、銀色 の剣の残像だけが残り、奴の体は斜めに切ら れた。 琴音がそう思った次の瞬間だった。 上半身をわずかに後ろに反らして、ギリギリ で剣をかわした奴が、鋭い牙の付いた大きな 口で男の右肩に噛みつこうと反撃してきた。
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