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「あら、お客さん?」
少女が黒猫に問うと、猫はピクリと震えた。
『みゃ~』
とぼけてみようと、猫のように鳴いてみせる。
「残念ながら"とぼけた"って無駄よ、わかるんだから」
ただの代理人だけど、ね。
『ちっ……ほらよ、渡し賃』
「ふふ、お願い」
少女に差し出された白紙のページに肉球をのせると、それはやんわりと光った。やがて光が収まって白紙に"物語"が現れる。
『ちょっと前までは"ただの猫"と区別なんてつかなかったくせに』
ふんっ、と黒猫は鼻を鳴らしてから寂しそうに後を続ける。
『だんだん人じゃなくなってるんだな』
「……そうかも、ね」
少女は柔らかく笑む。そんな少女に、黒猫は問う。
『いつまで"代理"のつもりだ』
黒猫の問いに少女は答えない。木漏れ日を受けて、ただ微笑む。
少女は今もまだ、代理人。
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