第1章

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「あら、お客さん?」 少女が黒猫に問うと、猫はピクリと震えた。 『みゃ~』 とぼけてみようと、猫のように鳴いてみせる。 「残念ながら"とぼけた"って無駄よ、わかるんだから」 ただの代理人だけど、ね。 『ちっ……ほらよ、渡し賃』 「ふふ、お願い」 少女に差し出された白紙のページに肉球をのせると、それはやんわりと光った。やがて光が収まって白紙に"物語"が現れる。 『ちょっと前までは"ただの猫"と区別なんてつかなかったくせに』 ふんっ、と黒猫は鼻を鳴らしてから寂しそうに後を続ける。 『だんだん人じゃなくなってるんだな』 「……そうかも、ね」 少女は柔らかく笑む。そんな少女に、黒猫は問う。 『いつまで"代理"のつもりだ』 黒猫の問いに少女は答えない。木漏れ日を受けて、ただ微笑む。 少女は今もまだ、代理人。
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