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午後16時頃、 バイトが終わり、 俺は住処であるオンボロアパートへの道を辿っている。 燃えるような夕日の色に、 不釣り合いな冷たい風が頬をなぞる。 電信柱の影が長く延びて、 まるで一枚の絵のような錯覚を感じる。 住宅地にも関わらず、 人気が無い道だ。 不意に足を止める。 約10mほど先に、 見慣れないものが見えた。 「学生?」 思わず声に出した。 近くに寄ってみると、 制服を着た市松人形のような少女が、 段ボール箱に入っている。 高校生に見える少女は、 何故か真っ赤なエレキベースを抱えて、 無表情に前を見つめて動かない。
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