第1章

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ボクは教室のドアを開けていた。 あれは夢だったのか、幻だったのか。 そもそも、政府があんな馬鹿げた法律を作る訳がない。 チャイムがなったため、ボクは自分の席に向かい急いでイスに座った。 「痛っ」 思わず立ち上がりイスを見る。 そこには画鋲が針を上に向けてテープで止められていた。 背筋がゾッとするのが分かった。 夢じゃない、これは現実だ。 よろよろと立ちすくむボクの元へ担任が近づいてくる。 「何やってるんだ、早く座れ」と言ってボクの両肩を掴み無理やりイスに押し付けた。 「痛い、痛いです。先生」 必死にもがくが手を払いのけることができない。 何でこんなことを、そう思いながら担任の顔を見ると 「誰?」とつい口から声が出てしまった。 担任はニヤニヤしながら、ことの経緯を語りだした。 「俺が誰か分かるか?クラスでリーダーをしていたと言えば分かるか?」 ボクは絶句した。この人は何を言っているんだろう。 彼はボクと同級生だ。 こんなおじさんではない。 「君はあの事件からどれだけ時が経ったと思うかい」 ボクが訝しげな目で彼を見つめているとニンマリと気持ちが悪い笑顔を作り言葉を続けた。 「君はあの事件で一度死んだのさ。脳死状態としてね」 「脳死?」 「そうだ。ずいぶんと大きく報道されたよ。なんせモデルケースの学校で自殺者が出たんだから」 「自殺?違う、キミが…」 ボクが否定しようとすると 「100年」 突然叫ぶように言い放った。 ボクが困惑した目で見つめていると 「君が屋上から落ちて、今に至る時間だよ」と、さも得意げな顔をして言う。 ボクは訳がわからなくなった。 100年も立っていたらもうおじいさんの筈だ(もしくは老衰で死んでる)。 彼も100年経って30代くらいじゃ計算が合わない。 やっぱり騙そうとしてるんだ。 ボクは彼の手を振り払い教室を出ようとドアに手をかけた。 しかし、びくともしない。 向こうで誰か押さえているに違いない。 ボクは思い切り力を込めてドアを開けた。そこには何もなかった。ただ、暗闇ばかりが広がるだけだった。 「何…これ…」 闇はどこまで続いており、まるでここだけしか世界がないような気分になった。
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