権兵衛の思惑は?

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近所の知り合いやよく行く飲食店に、少年野球クラブ団員募集のビラを置かせてもらった。 ベッドタウンではあるが、それほど家はない狭い町だ。 私が新聞記者をやっていることも、ほとんどの住民が知っていた。 大の野球好きであることも。 「うちの子も入れてもらえるかな?」 小学四年生の歩の父親で、とんかつ屋の主だ。 苗字は、なんと言ったのか、忘れてしまった。 「親父さんの子って、女の子だったよね? 男の子についてこられるの?」 と、軽いイヤミを含め、冗談ぽく笑いながら、私は言った。 「近所の子達と野球ばっかしてやがる、とんだお転婆だよ」 ―― お転婆って、ほぼ死語だよな ―― 「野球が好きなら男女は問わないよ」 私がは言った。 「おおそうか! アユ、いるか!」 店の主は、大声で怒鳴り散らした。『あゆむ』 なので『アユ』か。 「また野球に行ってるみたいだよ!」 店の奥で女将さんが怒鳴り返した。
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