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私は指を差して軽く笑いながら、親たちに向けて言った。
首をすくめる人や笑顔を隠す人などいろいろといた。
みんな自分の息子や娘が心配でたまらないのだろう。
ビデオに我が子の勇士を撮っている親もいた。
「自己紹介を頼む」
私はまた一番右端の子に向けて言った。
「一丸小五年、羽山光樹です!
ポジションはピッチャーをやりたいです!」
とても元気な子だっただった。
しかし緊張しているのか、声が震えていた。
12人の中で一番背が高い。
160センチほどはあるだろうか、中学生かと思っていた。
ピッチャーであればこの年代だと相当の威圧感があるだろう。
ダメでもファースト、外野、キャッチャーでもいい。
使いどころはたくさんありそうだ。
初顔合わせで何もせずに覚えることは難しい。
そういう理由で、助手として、私の学生時代の後輩、三山を呼んでおいた。
コイツとはもう付き合いは長い。
三山には、ビデオ係を頼んだ。彼も野球が好きだったが、どうヒイキ目に見ても下手だった。
しかし、野球への情熱は私と変わらない気がする、気さくなヤツだ。
「おぉ、いいねぇー、元気だねぇー!」
と、三山が言った。
「お前の声が入るだろ、自重しろよ」
と、私が冗談ぽく言うと彼は少し肩をすくめた。
ちょうどいい機会だったので、三山のことも簡単に紹介した。
私は子供たちに笑みを向けた。
「すまん、さすがに初対面でみんなの顔と名前を覚えられんからな。
ビデオに撮らせてもっている」
私はまず子供たちを見て、親たちを見た。
異論があるようなそぶりを見せる人はいなかった。
「よし! 次!」
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