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そんな少女ちゃんにジジイ、いや担任のガー助先生はニカッと笑って、なにやら懐からモゾモゾと取り出した。
「――ほれ、これでくっつけなされ」
「……」
「どしたっ?」
ブンッ! という風切音が廊下に響く。
ジジイが手に持って渡そうとしている合成ゴム系接着剤を、少女が握っていた自分のもげた右足でフルスイングしたのだ。
『ズバギャッ!』
と、とてつもなく嫌な音がする。
そう――何かがもげる音だ。
「うぎゃぁぁ――! わ、儂の腕がぁぁ――!」
どうやらフルスイングの結果、ジャストミートしたのはジジイが持つ接着剤ではなく、それを持つ腕のほうだった。
「そんなんで、もげた足、くっつくわけねーだろ! 死にさらせ、このクソジジイが!」
「てめぇこのクソアマッ! 俺はとっくに死んでんだよ! つうかどうすんだよ! 俺、腕両方無くなっちゃっただろっ!」
「知らねーよこのクソジジイ! ボンドでくっつけとけよ!」
「くっつくわけねーだろ! ありゃジョークだよ、ジョーク! ……お前もいい歳なんだから、足がボンドでくっつかない事くらいわかれよ!」
もげた腕の付け根から、黄土色の何だか良くわからない液体をピュッピュと飛ばしながら、ジジイが吼え猛ける。
さっきまで『儂』とかジジ臭かった口調が、なぜか急に『俺』に変っているが、その辺はあまり深追いせずにキレるとそうなる、くらいに留めておこう。
そして、ジジイの前でぺたりと座ったまま、さっきからやたらと飛んでくる気味の悪い飛沫を、どこで覚えたのか華麗なスウェーバックでヒラリとかわして見せる謎多き少女ゾンビ、リーシャ。
ジジイと少女は激しく睨み合い、ぶつかる視線はまるでお互いの中間点でバチバチとスパークしているかのようだ。
舌戦はなおも続く。
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