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教室の戸を開けたら、そこには月明かりに照らされた机が並ぶばかりで誰もいなかった。
時を遡る事、三十分前……
今日、深夜にだけ開校する謎に満ちた学校に、一人の少女……いや、ゾンビが来る。
そう、ゾンビの新入生である。
それも少女のゾンビ。
略して少女ゾンビだ。
くれぐれもゾンビ少女ではないのでご留意頂きたい。
この少女ゾンビ、名をリーシャと言う。
日本人のくせに、生意気に偽名である。
『えー……だってえ、墓から這い出てゾンビとしてやってくんならぁ……本名は差し控えたいなぁ……身バレとかカンベンだしぃ……』
だそうだ。
ついでに言うと、
『えー歳ですかぁ? 女の子に聞くなんて、ヤ・ボ・だ・ぞっ! でもアナタにだけは特別に教え(以下略)』
で、自称十六歳だそうだ。
面倒臭いったらありゃしない。
バカである。
脳ミソ丸見えのスプラッターな奴が何言ってんだか。
あとこの少女ゾンビ、めちゃくちゃチャラい。
なんかボッロボロの夏用の白い半袖セーラー着てるんだけど、スカートがメッチャミニだ。
腐りかけた生足とかバンバン出しちゃっている。
よってチャラい女決定。
というか……
何したら顔、そうなるんだよ?
片側半分しか残ってねーぞ? 初対面ならそんな疑問を浴びせたくなるかもしれない。
だが、ゾンビにこの手の質問をしても無意味だ。
ギリギリ名前を覚えているくらいで、ほとんど生前の記憶が無い。
それでいて、しょーもない事だけは覚えていたりするのでたちが悪い。
そう、言い忘れていたが、ここはゾンビ高校のゾンビ学級である。
あ、そうそう、クラスは一つね。
あと校長先生と担任の先生がいます。
あー、もう察しちゃったと思うけど、先生もゾンビね。
みんなゾンビだぜっ――イエイッ!
と、なぜかナレーションがチャラくなったところで、説明ターンを終えて本編に移ろう。
「えー、アンデッドの諸君、おはよ……いや、こんばんは」
――こんばんグガー
「おやおや、そこの顔面がクシャオジサン並みに潰れちゃっている花子さん、無理に喋らなくてもいいんですよ? あなた、喋ると全部グガーになっちゃいますからね? それだと先生、何言ってるのかさっぱりわからんのですよ」
「グガー、グガー!」
「だから喋んなっつってんだろこのクソアマボケがァ!」
「グッ……がァ」
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