第1章

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教室の戸を開けたら、そこには上島竜兵がいた。 まごうことなき、上島竜兵がいた。 ハンチング帽を被り、額にうっすらと汗をかく上島竜兵がいた。 夏の暑い午後。 私はハンチング帽なんて被らなければいいのにと思った。 なぜなら、テレビでは3流芸人のように映っているダチョウ倶楽部だが、志村けんが率いる劇団ではかつて、いかりや長介が志村に伝えた新しいドリフの風格を身に付け始めているからだ。 肥後に至っては、いかりや長介のポジションのコントをそつなくこなし始めている。 だからハンチング帽なんて被ると、ちょっとした芸術家に見えてしまうのだ。 本当にお笑いのことを考えるなら、上島竜兵は手拭いでドジョウ掬いをするほっかむりをすればいいと私は思った。 家族がハンチング帽姿に好感を抱き、強く薦めない限りそうしたほうが良いと私は思った。 夏の暑い午後に教室の戸を開けたら上島竜兵がいた。 ドラゴンに連なるつわもの。竜兵がいた。 「YAAAAA!!!!」と、猛々しい竜兵がいた。 私のお日様、お月様。 竜兵がいた。 竜兵がいた……。 竜兵がいた……。 「……竜兵です」
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