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「信じるも信じねぇもテメェの勝手だけどよ」
何故か高広は泣きそうな顔をしてJrの手の中の球体を見ていた。
「それは人間の感情に反応して色を変える物質だ。俺の話にムカついてりゃ黒くなる。憎めば赤だ」
Jrの手の中の球体は、海の中のように青い。
「嘘発見器の代わりになるかと思ったが、役に立ちやしねぇ」
チッと舌打ちをする高広にJrは言う。
「タカが持ってた時から、これは青かったね」
高広が寄越した直後はもっと青が深かった気がするが、今はスカイブルーと言えるほど澄んできている。
「青の色の意味は?」
Jrの問いに、高広は吐き捨てるように答えた。
「悲しみ」
高広は左手に持っていたJrのカバンを無造作に上空に投げ上げた。
Jrはそれを掴み取ろうと腕をあげる。
目線が上を向いた。
その瞬間、高広は横っ飛びでカウンターを飛び越え、Jrにタックルした。
無防備な胴まわりを両腕で囚われ、Jrはその場に尻もちをつく。
その頬を高広は一発、殴った。
Jrの体格に比べれば、高広は華奢だ。
その打撃は、Jrになんのダメージも与えなかった。
しかし、
「……ばかやろうがっ」
絞り出すように呟いた高広の声が、Jrを殴った。
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