「俺」

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「ほら、座れよ。これがお前の望んだ世界だろ?」  教室の中央には俺の席。  そこを囲むよう、取除かれた椅子と机が無造作に散らばっている。 「これがお前の世界だ。よかったな、願いが叶ったぞ?」  腹の底からの吐き気。  それをなんとか我慢しようとする俺の意思に逆らうように胃の内容物が逆流してくるのを感じ、堪らず窓へと駆け出す。  先ほどの金縛りが勘違いだったのではないのかと思うほどすんなりと体が動いた。    窓へを開け、口の中な嘔吐物を吐瀉しようとした際に窓の外の景色が目の奥に焼き付いた。  校庭一面を埋め尽くす、机と椅子。  校庭だけではない。外の目に入る範囲全てが机と椅子に溢れかえっていた。  見渡す限りの机、椅子、机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子机椅子の山。  胃がもう限界だった。  俺は胃の中身をすべて吐き出す。  吐き出した後も胃液すらも吐き出そうとしているかのようにえづき続けた。 「……あーあ、汚ねぇな。俺にそんな物かけんなよ」  突如また俺の声がした。  だが後ろからではない真下から聞こえた。  真下。窓の遥か下。  そこには、頭部を真っ赤に染め、脳漿をぶちまけ地に伏しているもう一人の俺がいた。 「……――!!」  あまりの光景に尻もちをつく。 「どうした? これもお前が望んだ未来だろ?」  現実から目を背けるよう、とっさに頭を抱え込む。  勘弁してくれ。  俺が何をしたっていうんだ。    お願いだ……もう。 「××……×××××」  懇願するように言葉にならない文字を呟いた。 「いや、やめないね。なぜなら俺はお前で、そして俺は間違ってないからな。なあ、そうなんだろ? 俺? 俺たちは誰よりも正しくて、正しくて、正しいんだよな? 間違っているのはぜーんぶ周りの奴等、そうなんだよな?」  違う。  悪いのは俺だ。  何も言い返せない俺が悪いんだ。
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