第1章

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 教室の戸を開けたら、そこにはスニーカーを履いた、巨大な足があった。そう、並ぶ机もロッカーも踏みつぶして、大きな右足が一本、天井からにょっきりと教室を埋めていた。 「な……」  人間はあまりおどろくと、悲鳴が出ないというのは本当らしい。俺は廊下に座り込むと、逃げることも思いつかずにバカみたいに震えていた。  遅刻だと思って駆け込んだら、なんなんだこれは? クラスメイト達は踏みつぶされたのか? なんで俺がこんな目に?  巨大な右足は、俺の事に気づいていないのかじっとしている。それにしても、この靴は見覚えがある。一体どこで見たのだろう。  黒に近い茶に、ロゴマーク。そして先が少し汚れた靴ヒモ。 俺は恐る恐る自分の足を見下ろした。黒に近い茶に、ロゴマーク。そしてやっぱりヒモの先端が汚れている。 間違いない、これは俺の靴だ! 俺はおかしくなりそうだった。なんで俺の足が巨大化しているんだ? てか、俺の足はここにこうしてちゃんとあるし? でも、何度見ても目の前にあるのはどう見ても俺の足の巨大版だ。ヒモに引っかかっている猫の毛まで、一緒だ。 そう。猫の毛。今朝、遅刻だと焦った俺は、通り道で寝ていた年取った猫に気付かず蹴飛ばしてしまったのだ。猫は苦しそうに鳴いたが、急いでいた俺は悪態をついただけで足を止めなかった。 そういえば、猫って長年生きてると化け物になるんだっけ? まるで振り子のように、右足が後ろに遠ざかった。かかとの方には窓があるはずなのに、邪魔にはなっていないようだった。 「え?」 それが前に蹴りだすための予備動作だと俺が気づく前に、勢いをつけたつま先が僕のみぞおちに ――完――
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