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何も装飾らしい装飾がない、黒い柄に黒い鞘の剣。まずは、それを手に取る。
「本物……か?」
ズッシリと重く、存在感を示す剣。俺は、それをおそるおそる抜いてみる。
シャリシャリシャリ……。
そんな音を立てながら抜いたそれは、鈍く俺の顔を映す。刀身をつついてみると、金属の硬さが確かに伝わる。思い切って石壁を斬りつけてみると、さすがに弾かれたが、傷跡を残すことができる。
「……本物、だな」
日本でこんなの持ってたら銃刀法違反じゃないのか?
そう考えたが、そもそもここが日本なのかどうかすら怪しい。
「何か……ここのことが分かるものは……」
そうなると、当然、目の前の本が有力だ。そっと本に手を伸ばし、触れてみると、随分と滑らかな革であることが分かる。そして、手に取って、表紙の方を見ようと裏返す。
「冒険の書?」
そこには、そんなふざけたタイトルがあり、裏面と違い、何やら赤茶色の斑点がいくつもあった。それは、まるでコーヒーを飛び散らせたようにも見え、何となく臭いをかいでみる。
臭いは……普通だ。特に、変な臭いはない。
そんな感想を抱いて、俺は本を開いた。
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