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『冒険の書
一日目
第一フロア 地帯区分A
柿村啓は、現状の確認を行う
剣を調べた
剣で壁を斬りつけた
冒険の書を調べた』
「な……んだ? ……これ?」
柿村啓は俺の名前だ。そして、この冒険の書とやらに黒い文字で記されているのは、今まで俺がとった行動だ。
誰かに監視されてる? いや、でも、どうやってこれに書いてるんだ?
グルグルと思考が巡る。
これ、紙じゃなくて、すごく薄い電子画面とかなのか?
できる限り、現実に則した答えを出そうとして、俺はそんな可能性を考えてみる。しかし、どう見てもそれは紙で、触った感触も普段使っているノートと変わらない。
「どういう……ことだ?」
異常な現象を目の当たりにして、すぅっと血の気が引く。
何だこれ? 何だこれ? 何だこれ?
繰り返される問いに応えるものなどいない。そして、何も分からないままに次のページを捲ろうとして……すぐに、開かないことに気づいた。
「えっ?」
分厚い本は、適当に開いた一ページしか見ていないのに、その後はガッチリと固まっていて、どんなに捲ろうとしても捲れない。それならばと思い、俺は反対のページを捲ろうとする。
「……あ」
そして、簡単に捲れたそのページには、何かがびっしりと書き記してあった。それはもう……普通の本なら余白であるはずの部分にまでびっしりと……。
『注意ちちちゅちゅう注意けけ剣とととほほ本ははは常にもも持ちあ歩けとととび扉がしししし死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね――――――』
「うわぁぁあっ!!」
とてもじゃないが、これを常人が書いたとは思えない。後の文章は全て、『死ね』という言葉で覆い尽くされている。あまりに予想外の本の内容に、一瞬思考を停止させてしまった俺は、すぐに悲鳴を上げ本を投げ出して尻餅をつく。
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