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教室の戸を開けたら、そこには窓が見えた。
(ん?なんか変…)
いつもより、かなり近い。
それに風景が違う。
いつもの教室の窓から見える景色は、校庭だ。
でも、今見えているのは、中庭だった。
そして、首を振ってみた。
どう見ても廊下だった。
(あれ?扉、開けたよね?)
振り返ると、いつもの教室の扉があった。
(なんかのデジャブ?一瞬寝ちゃってたとか)
まあ、いい。
もう一度、開ければばいいんだから。
そして、勢いよく開けた。
どう見ても廊下だった。
今いる場所も廊下だ。
(えー!うそー!どうなってんの?ドッキリかなにかー?)
こんな凝ったドッキリをわたしにする必要なんてないはずだ。
(えー、どうしよう…)
今、気が付いたんだけど、妙に静かだ。
音が何にも聞こえない。
仕方がないので、誰か人を探すことにした。
靴箱のところまで行くのにガラスの扉がある。
そこを右に曲がれば下駄箱だ。
観音開きの重いガラスの扉を開けると、廊下だった。
廊下には違いないのだが、今わたしが歩いてきた廊下だ。
(なによ、これー!)
頭がおかしくなりそうだった。
幸いここは1階だった。
この廊下の窓をあけて外に出ようと思った。
廊下の窓を開けると、廊下だった。
その場でへたり込んでしまった。
(もう!どうなってるのよ!)
(誰か、いないのー!)
もうひとつおかしいことがあった。
叫んでいるのに、わたしの声が聞こえなかった。
全く音のない世界だった。
わたしの足音も聞こえない。
廊下に閉じ込められた絶望感で、何もする気がなくなってしまった。
ほんの数分前、下駄箱を左に曲がって、
さっきの重いガラス扉を開けた右手に大きな姿見がある。
(まさか、ここって鏡の中の世界?)
とんでもない発想に至ったが、あながち間違いではないと思った。
私は素早く立ち上がり、鏡の前に立った。
「結城ぃー、おはよう!」
わたしの友達のサヤカだった。
涙があふれてきた。
(あそこって、鏡の中の世界だったんだ)
「愛里 カバンは?」
鏡の中の世界に置いてきてしまった。
(もう、この鏡は見たくない!!)
「忘れてきちゃったみたい」
と言って、教室へ続く廊下を歩いて行った。
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