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燃え盛る炎は、感情を持たない殺人マシーンのように街を焼いていき、人々は逃げ惑うが逃げる場所はどこにもない。
街の中は炎に焼かれ外には何千という敵がいる。絶望に打ちひしがれた俺はその光景をただ呆然と見ている事しか出来なかった。
す...じ...ん
遠くで呼び声が聞こえる。
誰の声だろうか。
すーじ...ん
ずっと俺の名前を呼んで...
「スージく~ん」
ハッと目を覚ます。
まだ視界はかすれているものの数回瞬きをすると、滲んでいた視野が開けてくる。
すると、そこにいたのは俺を覗き込む女性の顔だった。
手入された長い青髪に、目の色は透き通るようなスカイブルー、やさしい目をしている彼女の名はロゼッタ。
俺と共に旅をしている1人であるが―――
なぜ、こんなにも近いのだろうか?
ロゼッタの顔は俺の目と鼻の先で、青髪が首に触れ少しくすぐったい。
寝返りも打てないほど近い彼女は、眼路に力を入れ眉を吊り上げながらジーと俺の方を見ている。
その表情は真剣そのものだった。
「あの~ロゼッ...タ ? さ...ん」
俺は念のため さん を つけた。ちょっと怖かったからだ。
すると彼女は眉を落としいつも通りおっとりした優しい目つきになった。
「おはよースージ君」
俺はたどたどしい口調で「おはよう」と返すと、ロゼッタはニッコリと笑顔を見せ、トコトコと自分の荷物が置いてある部屋の端の方へ歩き出した。
何だったんだろうか今の。
何か悪い事でもしたのかな。いやいくらか思い当たる節はあるんだけど、多分どれも違うだろうと。
冴えない頭で考えていると回答がロゼッタ本人から返ってくる。
「スージ君?うなされてたよ」
俺が頭の上に?を立てていたからか、はたまた俺の考えを読んだからなのかは知らないが、彼女のその言葉を聞いて納得した。
さっきの怖い顔は悪夢にうなされていた俺を心配してくれていたのだということを―
「そっか、ありがとう」
寝返りをうち、彼女の後姿を見ながらそういうと、荷物を入れる手が急に早くなったのを確認した。
「別にいいよ。き き 気にしないで」
照れる要素が一つもないのだが、なぜ彼女はこんなにも照れているのか、なぞだが、これについてはもう慣れたので深く追求しないし、さっきみたいに回答が返ってくることもないだろう。
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