国の現状

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この世界はアムネシアワールド『記憶喪失の世界』と言われており。 その名前で呼ばれるようになったのは今から丁度5年ほど前の事だ。 この世界の住人はある日を境に4つの記憶以外全て亡くした。 持っている4つの記憶は人によって様々で、なぜ世界中の人が記憶をなくしたかは誰も知らない。 それだけでも不思議な事なのに、人々はその事を理解し辺りを見て気付く。 自分の生活痕が何ひとつない。 見渡す限りの自然なのだ。 記憶にはあるのに、そこには実体がない。 今考えれば、ちゃんちゃらおかしい話だが、その当時は誰も疑問すら持たなかった。 それは知識というものがなかったからだ。 だが、赤子とは違う。 人々は断片的な知識(記憶)なら持っていた。 ある人は家の建て方の記憶を持っており。 ある人は木の切り方を知っている。 またある人は石工の記憶を持っていた。 人々は考え、記憶を持ちより、以前の生活を再現しようとした。 するとあろうことか。 人々は村を作り、交通の便をよくするために道路を敷き、街へと発展させた。 街が出来るとある人は言った。 「もっと、もっとここを大きくし、より豊かな生活をしよう。俺が指揮をとる」 国の誕生だ。 当然、国民はみんな賛成。 反対するものなどいなかった― だが、国はそこだけではなかった。 同じように記憶を集めて作った国が、既に何百とできていたのだ。 使える土地は決まっている。 陣地を広げようとすると隣国と衝突するのは目に見えてわかる。 すると、国の指導者は言った。戦争をしよう。 みんな大賛成だ。 王から聞いた話では、戦って勝てばそれで領土が増えると教えられ、敵の国王をやっつければそれで終いだと。 軽い気持ちで人々は戦争に臨んだ。 だが、現実は違った。 戦争とは、昨日まで隣にいた人が死に、仲良くなった人も死ぬ。 ただの殺し合いだった。 だが、なぜか。 戦争を始めようと言った人はニコニコして偉そうな椅子に座っており。 そのことに対して、国民は怒りを覚えたが、国王の持つ圧倒的な知識量で、難なく説得される。 人々は苦しみの果てに得たのは領土と少しの人々、奴隷だった。 結果、その国は勝利する。 すると悲しみが嘘みたいに吹き飛び、喜びの渦に呑まれた。 それはこの国に限った事ではなく、同じ事は世界で起きていた。 どこへ行っても戦争、戦争、戦争、戦争。 ルール、秩序、など一切なかった。
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