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教室の戸を開けたら、いつもの夏休み後の光景が広がっていた。
見慣れた顔はすべて夏の名残を残して黒く光っている。
俺は少し、違和感を感じた。
皆の顔が何となく暗く沈んでいるように見えたのだ。
「おはよう!」
俺は元気よく、いつも通り教室に入ると挨拶をした。
数人のクラスメイトがすでに教室には居た。
だが、誰一人として俺の挨拶に応じるものが居なかった。
あれ?聞こえなかったのかな。
俺は、自分の机に向かうと、すでに前の席の親友の竹中が座っていたので、竹中の背中をぽんと叩き、また挨拶をしたのだ。
「竹中、おはよう!」
竹中は振り向かずに、黙って席を立ち、教室の外に出て行ってしまった。
え、もしかして、俺、無視されたのか?
言いようの無い不安にさいなまれた。
何か竹中に悪いことしたのかな、俺。
教室に戻ってきた竹中にもう一度後ろから話しかけた。
「なあなあ、竹中~。」
いつもなら、面倒くさそうにだけど、あぁ?と首だけを後ろに曲げて
変な体制で俺の顔を見るのだが、また無視された。
俺はいい加減、腹が立って
「無視すんなよ!」
とつい声を荒げてしまった。
それでも、竹中はこちらを向かなかった。
こんなに大声を出したんだから、皆が俺を見ているはず。
俺は、教室を見渡した。ホームルーム前、それぞれがわいわいと話をしている。
結構大声を出したつもりだったんだけど、皆気付いていない。
竹中に無視された俺は、仕方なく、隣の佐藤に話しかけた。
「なあなあ、佐藤。俺、竹中に無視されてんだけど、俺、何かしたのかな?」
佐藤は黙って、席を立ち、教室から出ていってしまった。
「なんだよ、お前まで無視すんのかよ!」
そう言いながら佐藤の後を追った。
佐藤はトイレのほうに向かった。
後ろから怒鳴る俺を全く無視しながら、トイレに向かい個室に入った。
「ウンコかよ!」
俺はわざと佐藤の気を引くためからかった。
中からは何も反応がなく、面白くないので、佐藤が今ウンコしているのを
クラス中にばらしてやるつもりで、教室に帰った。
誰に一番最初に話そう。
お、佐藤が好きだという噂の、春香に言ってやる。
俺を無視した罰だ。
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