第1章

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教室の戸を開けたら、いつもの夏休み後の光景が広がっていた。 見慣れた顔はすべて夏の名残を残して黒く光っている。 俺は少し、違和感を感じた。 皆の顔が何となく暗く沈んでいるように見えたのだ。 「おはよう!」 俺は元気よく、いつも通り教室に入ると挨拶をした。 数人のクラスメイトがすでに教室には居た。 だが、誰一人として俺の挨拶に応じるものが居なかった。 あれ?聞こえなかったのかな。 俺は、自分の机に向かうと、すでに前の席の親友の竹中が座っていたので、竹中の背中をぽんと叩き、また挨拶をしたのだ。 「竹中、おはよう!」 竹中は振り向かずに、黙って席を立ち、教室の外に出て行ってしまった。 え、もしかして、俺、無視されたのか? 言いようの無い不安にさいなまれた。 何か竹中に悪いことしたのかな、俺。 教室に戻ってきた竹中にもう一度後ろから話しかけた。 「なあなあ、竹中~。」 いつもなら、面倒くさそうにだけど、あぁ?と首だけを後ろに曲げて 変な体制で俺の顔を見るのだが、また無視された。 俺はいい加減、腹が立って 「無視すんなよ!」 とつい声を荒げてしまった。 それでも、竹中はこちらを向かなかった。 こんなに大声を出したんだから、皆が俺を見ているはず。 俺は、教室を見渡した。ホームルーム前、それぞれがわいわいと話をしている。 結構大声を出したつもりだったんだけど、皆気付いていない。 竹中に無視された俺は、仕方なく、隣の佐藤に話しかけた。 「なあなあ、佐藤。俺、竹中に無視されてんだけど、俺、何かしたのかな?」 佐藤は黙って、席を立ち、教室から出ていってしまった。 「なんだよ、お前まで無視すんのかよ!」 そう言いながら佐藤の後を追った。 佐藤はトイレのほうに向かった。 後ろから怒鳴る俺を全く無視しながら、トイレに向かい個室に入った。 「ウンコかよ!」 俺はわざと佐藤の気を引くためからかった。 中からは何も反応がなく、面白くないので、佐藤が今ウンコしているのを クラス中にばらしてやるつもりで、教室に帰った。 誰に一番最初に話そう。 お、佐藤が好きだという噂の、春香に言ってやる。 俺を無視した罰だ。
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