第1章

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「なあなあ、春香。今、佐藤、トイレでウンコしてるんだぜ。」 春香のそばまで行き、机に手をついて、聞こえるように耳元で話した。 春香はまったく何も反応しなかった。 嘘だろう?春香まで俺を無視するのかよ。 どうなってるんだ、このクラスは。 俺は頭にきて、教壇の上に乗って叫んだ。 「何でみんな俺を無視すんだよ!」 こんな大きな声で叫んでいるのだから、絶対に聞こえるはず。 だけど、皆は俺を無視している。 「俺が何をしたって言うんだ。」 俺がもう一度叫ぶと、チャイムが鳴り、小林先生が教室に入ってきた。 「きりーつ。れい。」 その号令が発せられた時に小林先生がこちらをチラリと見て 「田中君、席に戻りなさい。」 と小さな声で俺に注意した。 「おねがいしまーす。」 その声とともに、俺は仕方なく自分の席に戻った。 いったい今日はどうなっているんだ。 俺は気分が悪いので、昼休みを前に学校をサボって家に帰った。 家には母さんが居るはずなのに、誰も居なかった。 俺は気分が悪くて、家に帰ってもお腹がすかず、そのまま自分の部屋で寝てしまったのだ。 気がつくと朝の9時だった。 やばっ!嘘だろう?俺何時間寝てたんだ! 何で母さんは起こしてくれなかったんだ! 俺は慌てて二階の自分の部屋から降りて母さんに抗議しようと思った。 ところが、母さんは居なかった。 母さん、どこに行ったんだろう。 俺は不安になった。 母さんの携帯に電話してみた。 「この電話は、電波の届かないところにいるか、電源が入っていないためかかりません。」 そう乾いた声が無情に伝えてきた。 父親の携帯にも電話をかけてみたが同じだった。 俺は不安になった。 とりあえず、学校に行ってみよう。 ふと小林先生の顔が浮かんだのだ。 生真面目で淡々と授業を行う、面白みもない普通の先生。 だけど俺には今、頼れる大人が小林先生しか浮かばなかった。 それにしても腹が減らない。もう丸一日以上、何も食べていないのに。 俺はとぼとぼと学校への道のりを歩いて行った。 教室はちょうど、1時間目が終わった休憩時間だった。 俺は自分の机に違和感を感じた。 俺の机の上に白い花がいけた花瓶が置いてある。 俺は猛烈に怒りを感じた。 「誰だ、こんな嫌がらせをするやつは!」
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