エピローグ――いつか来るその日まで

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「はーい」 『今、どこにいる? こっちはもう着いたけど』  はっとして時間を確認する。手早く済ませて待ち合わせの喫茶店に行こうと思っていたのに、もうこんな時間になっていたなんて! 「あ、ごめん! あと十分くらいかかるかも!」 『急がなくていいぞ。飲み物でも頼んで灯里と待ってるから』  冬吾は、前に話していたように灯里と直接会う機会をセッティングしてくれたのだ。美夜子は灯里のことを気に入っていたので、直接会えるこの日をとても楽しみにしていた。 「うん、そうしといて!」 『ああ、じゃあまた後で』 「……あ、待ってノラ!」 『なんだ?』  さっきのことを、伝えるべきだろうか? 美夜子は迷った。それを知ったとき、彼は何を思うのだろうか? 美夜子は考えて、そして言った。 「……あーいや、ごめん。なんでもないよ。じゃ、全速力で行くからって灯里ちゃんにも言っといて!」  電話を切った。きっと、まだそれを話すときは来ていないのだと思う。いつの日か、それを明らかにするべき時は必ず来る。根拠はないが、そう思う。だからそれまでは、記憶の戸棚に鍵をかけてしまい込んでおこう。  願わくば、その日が来るまでは、この楽しい時が続きますように。 -終-
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