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禊屋は部屋の真ん中あたりに立つと、扉から見て向かい側の壁に取り付けられたランプを見上げた。無地の筒型のランプシェードがかかっているシンプルなものだ。シェードの内側から電源のコードが伸びており、プラグとの中間部にスイッチが付いている。この部屋の中では珍しい装飾品だが、もしかしたら部屋の改修前のものをそのまま利用しているのかもしれない、とも思う。
コンセントは部屋に三カ所で、いずれも低い位置にある。一つ目は扉のほぼ真正面奥、デスクの本来の位置に近いところだ。これはパソコンの電源用だろう。すぐ側には壁埋め込み型の無線LANルーターが設置されている。
残る二つは扉側の壁の中央近くと、その真向かい正面の位置。そのうち後者はランプの真下の位置にあたる。現在、ランプの電源プラグはコンセントから抜けている状態だ。
「ちょっと点けてみよっか」
禊屋はプラグをコンセントに差し込む。すると、スイッチを操作する前にランプの明かりが灯った。禊屋は移動して蛍光灯のスイッチを切る。すると、ランプから発せられる暖色系の光が、部屋をほのかに照らすようになる。
「どぉ? こんな感じだった?」
「ああ。多分、間違いない。でも、どうしてちゃんと明かりを点けなかったんだろう?」
蛍光灯ではなく、壁掛けランプで明かりを点けておくことになにか意味が?
禊屋はまたランプの近くに戻りながら、
「それはまだはっきりしないけど――ねぇ、キミはずっと、覗き穴からことの一部始終を全て目撃していたと言える?」
「どういう意味だ、それ?」
「んー、そのままの意味で」
「……そう言われると、全部を見ていたわけじゃない。というか、見えなかったんだ。途中で目の前が真っ暗になって、何も見えなくなった。それから、なにか物が落ちるような音が聞こえた。こう、どさどさどさー……って感じの。その後で、今度は首を切るような音が聞こえてきたんだ。それから少しして、扉の内鍵が開けられたから、中へ入った」
「見えなくなった……か」
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