第三章――首斬り天狗

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「――部屋に残った残骸から判断して、使われたのは着地式の閃光手榴弾……らしいよ。キミが扉を開ける前に、予めピンを抜いておいたんだろうね」  禊屋は死体を検分しつつ話す。首を切られた死体という、大抵の人間は直視することも躊躇うほどのおぞましい光景であるはずだが、禊屋は平気な顔をしている。慣れているのだろう。  あれからすぐに夕桜支社へと連絡を入れ、ことの顛末を報告した。EMCにはしばらくしてから応援の社員が十人ほど駆けつけ、黒衣天狗に襲われる危険があった禊屋も、ナイツの車に保護されEMCまで送り届けられた。 「窓はなく、入り口は一つだけか。黒衣天狗を捕らえるには絶好の機会だったようだが……肝心の狩人の腕が悪くてはな」  乃神はため息をついて言う。今、店長室には冬吾、禊屋、乃神の三人が残っていた。黒衣天狗に繋がる証拠が残されていないか、調べているところだ。 「……すまない」  嫌みを受け流すだけの気力も今の冬吾にはない。 「乃神さん。ノラは殺し屋とは違うよ」  禊屋は死体から顔を上げて言った。 「それに、相手はB級ヒットマンだもん。殺されなかっただけマシと思わなきゃ」 「ふん……生きているだけで役に立てばいいんだがな」  乃神はつまらなそうに言いながら、扉から見て左壁際にあるサイドボードの引き出しを上から順に開けていって調べ始めた。
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