第三章――首斬り天狗

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「ところでさ、佐渡さん殺されちゃったけど、依頼のほうはどうなるの?」  禊屋が尋ねると、乃神は特に目につくものはなかったらしい引き出しを閉じつつ言った。 「まだ奴が犯人だったという確かな証拠が見つかったわけではないんだろう? ならばそれが見つかるまでは調査は続けてもらう」 「まぁそうだけど。難しいかもねー、本人から自白が取れないとなると」 「目下のところ、最大の手がかりが黒衣天狗だ。奴を捕らえることができれば涼城花凛殺しについても何か分かるだろう」  乃神は扉のほうへ移動する。 「お前たちはこの部屋の調査を続けてくれ。俺はここ以外の場所に佐渡と黒衣天狗の繋がりについての手がかりがないか、調べてみる」  乃神が部屋を出ていくのを待ってから、禊屋が冬吾へ向かって言う。 「――それにしても、どうして黒衣天狗はキミを殺さなかったんだろう? あ、誤解しないでね? キミが生きててくれたことはもちろん嬉しいんだよ? でも……ちょっと不可解じゃない?」 「それは、俺も気になってる。あの時、閃光手榴弾で目の前が真っ白になって……黒衣天狗は殺そうと思えばいくらでも俺を殺せたはずだ。安土さんも。まぁ、彼女の方は放っておいても黒衣天狗にとって障害にはならないだろうけど」  啓恵は今、ナイツの社員の付き添いで別室で寝かされている。ただ気を失っていただけなので、そろそろ目が覚めたかもしれない。
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