第三章――首斬り天狗

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「黒衣天狗はどうして佐渡の首を持ち去ったんだろう?」 「そうそう、そのことなんだけど」  禊屋は思い出したように言う。 「ナイツのほうで黒衣天狗について色々調べてくれてたみたい。こっちに来る途中で色々聞かせてもらったんだけど、今までのデータによると……黒衣天狗は必ず、暗殺(ヒット)した相手の首を切断して、持ち帰ってるらしいよ」 「……なんだそりゃ? なんのために?」 「依頼主に届けるため、とか? 依頼主と会う際にもああやって顔を隠してるなら、その分信頼を獲得する必要もあるだろうし。しっかり殺した証拠を持ち帰ってきてくれたら、依頼した側としては安心じゃない?」  成果を正しく報告するために……か? まるで戦国時代だ。 「それなら、佐渡を殺したのもまた別の人物からの依頼だったわけか?」 「それもあり得るよ。でも確かとは言えない。ただ単純に、黒衣天狗が佐渡の三億に目が眩んだだけって可能性もあるからね。首を持ち帰る理由だって推測だし、本当はただの自己満足みたいなものなのかも」  佐渡殺しは黒衣天狗単独の意図によるものなのか、あるいはそうではないのか、それも問題の焦点となりそうだ。 「――ありゃ? ありゃりゃりゃ?」  突然、死体を調べていた禊屋が奇妙な声を出す。 「どうした?」 「うーーん? これ……ってどーいう……いや、でもそーいうこともある、かな……?」  禊屋は手元の何かをじっと見て考え込む。しばらくして顔を上げると、今度は眉間を指でこすりながら辺りをうろうろしだした。
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