第三章――首斬り天狗

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「そう考えると、あれもか……?」 「なんのこと?」 「佐渡と直接顔を会わせて話す前に、部屋の中の様子をこっそり確かめられないかと思って、覗き穴を覗いてみようとしたんだよ。でもそのときには蓋が動かなくて無理だった。だから、もしかしたら佐渡がなにか細工を施して動かないようにしていたのかもしれないと思って」  その後、黒衣天狗を目撃した際には問題なく蓋が動いたことから故障ということは考えづらいだろう。 「覗き穴……か」  禊屋は扉のほうへ近寄って、覗き穴の周囲を観察し始めた。ちなみに、扉のノブ及び閂型の内鍵のほうには細工の跡は見られなかった。黒衣天狗は内鍵によって施錠を行っていたと素直に考えていいだろう。禊屋はざっと観察を終えると、次は扉を開けて、腕だけ外側へ伸ばして蓋を動かしてみたりする。 「へぇー。これ、内側から蓋が開いてるかどうかわかるようになってるんだね」  禊屋が確かめるのを見て、冬吾も初めて気がついた。  部屋の内側から見た場合、扉の真ん中あたりに覗き穴があり、そのすぐ上に一部、くり抜かれたようになっている部分がある。大きさとしては縦三センチ、横一センチほどの長方形、そこからビニールテープの貼られた金属が覗いているのだ。  それは外側に取り付けられた蓋の裏面にあたる部分である。覗き穴の蓋が閉じた状態だと、緑色のテープが貼られた部位が見えるようになっており、蓋をスライドさせ覗き穴を露出させると、当然内側から見える蓋の裏面の部位も移動することになり、今度は赤色のテープが貼られた部位が出現するようになっている。
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