第三章――首斬り天狗

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「……あった」  椅子の座面裏に、セロテープで貼り付けられた黒く丸い物体があった。間違いない、盗聴器だ。百円玉くらいの大きさで、注意深く見ないと椅子の部品かと思って見過ごしてしまうかもしれない。  どうするのかと思って禊屋を見ていると、目が合った。彼女は口の前で人差し指を立てる。「喋るな」という意味なのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。詰めにかかるための、彼女なりの儀式なのだろう。禊屋は盗聴器に向かって冷静に、且つ挑発的に言い放つ。 「――謎は禊ぎ払われた。観念するんだね、黒衣天狗。いいや、いっそ本名で呼ぼうか。佐渡拳さん?」
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