第二章――闇夜の怪人

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「玄関には鍵がかかっていて、そのキーは室内のテーブルの上にあった。でも、このマンションは全室オートロックだからこれは問題にならない」  犯人は花凛を殺害後にそのまま部屋を出ていったのだ。電灯を消しておかなかったのは、ただ単に忘れていたのか、あるいは消す意味もないと判断してのことか。 「一つ気になること。部屋の中にも遺体の服からも、携帯電話が見つからなかった。これは多分、犯人が持ち去ったと見るべき。犯人にとって都合の悪い情報……もしかしたら、犯人の正体に繋がるおそれのある情報が入っていたのかもしれない」  そうであるならば、やはり犯人は花凛の知り合いということになりそうだ。 「犯人は暮野じゃないのか?」  冬吾は素直に自分の意見を述べた。禊屋は頷く。 「そうかもね。彼女と一緒にいた可能性が一番高い人物なわけだし。死体の様子からして死後二日から三日は経過していたから、殺されたのは長良組でお金が盗まれていたことが発覚した前後だね」  つまりその後……長良組が暮野と花凛の関係に気がついた頃には、既に花凛は殺害されていたのだ。  気温の低い日が続いていたせいか、遺体がほとんど腐食を起こしていなかったのは冬吾にとって幸いだった。これが真夏の出来事だったら、一生忘れることのできない光景を見る羽目になっていたかもしれない。 「長良組から金を盗んで、二人で逃げるつもりだった。しかし仲違いを起こして暮野は涼城さんを殺害、そして逃亡……うぅん、『いかにも』なストーリーだよね」  禊屋は両腕を組んで言った。
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