第二章――闇夜の怪人

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第二章――闇夜の怪人

 その後しばらくして、ナイツの死体処理班が到着した。自分たちはその死に関与してはいないが、このまま放置しておけばいずれ死体は別の者に発見され、警察沙汰になることは目に見えている。警察とナイツは極力互いにノータッチの関係であるらしいが、それでも余計な面倒事が起きないとは限らない。よって組織にとってのリスク回避のためにも、花凛の死体をここに放置しておくことはできないそうだ。  花凛の死体は極秘に処理され、世間的には失踪したまま、ということになる。なんとも無情な話だが、ここは割り切るしかない。 「後頭部に大きな打撲痕があった。それが死因だろうね」  禊屋は死体が運ばれていくのを見守りながら言う。既に死体と部屋の調査はあらかた済ませていた。 「凶器はおそらく、この置物。底のところに血が付いてる」  テーブルの上に置かれてあった置物を手に取る。ブロンズ製の、台座の上に猫が座っているという形状のものだ。特に珍しいようなものでもない、どこかの土産物屋で売られていそうな代物だった。台座の裏側に、少量の血痕が付着しているのがわかる。花凛はこれで後頭部を殴りつけられたのだろう。 「ぱっと見、衝動的に置物を手にとって殺害したように思えるけど、実際のところどうだったのかはまだわからない。部屋をざっと見て回ったけど、財布や預金通帳、高価そうなアクセサリーには手が付けられてなかった。他にも荒らされたような形跡は特になし。何か失くなっていたなら、それは部屋に何が置いてあるかよく知っている人物の犯行の可能性が高い。少なくとも行きずりの強盗とかいうのではなさそう」  禊屋は調査からの考察を述べていく。自分の中で考えを整理しておく意味合いもあるのだろう。
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