調査団

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 あり得ない。  そう言いたかったその言葉が、声になることはなかった。  まだ開きっぱなしの戸の奥で、何かがうごめいたのを感じたせいで……。  そして、それを見たであろう我々の一部の人間は、おそらく同じことを感じた。  カエラナキャ。  ふらり……ふらりと、我々の一部は導かれるようにして教室の中に入ろうとする。 「お、おいっ、何して……」  途中、止めようとした者の声も、中にうごめいたものを見たのか、我々と同じになる。  ふらり。  ふらり。  ふらり。  ふらり………………。  戸がひとりでに閉まったことにも気づかず、我々は全員が教室の中央に来ていた。 「ただいま」 「ただいま」 「ただいま」  誰ともなく次々に同じ言葉を口にして、我々は、仲間達の体から蔦が伸び、苔を撒き散らす様子をお互いに見つめる。  アァ、ヤット、カエレタ。  この世界に人間なんて元々居ない。  居るのは、植物の姿をした者のみ。  人間は、我々の空想の産物。  それをようやく思い出した我々は、もうじき、残りの仲間も目を醒ますだろうことを知る。  サァ、ハヤク。  ハヤク、オキヨウ。
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