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どうしたのかと、動きづらいこの場所で視線を向けると、そいつは切りつけた蔦から出た、何かの液体を浴びていた。
「……ぁぁ…」
ガタガタと震え、放心するそいつを見て、我々は一度ここから出る決断を即座に下す。
ただ、一人が蔦を切りつけただけで退散した我々は、さぞ滑稽に見えるだろうが、我々の仲間は尋常じゃない震えだった。
仕方ない。
仕方ないんだ。
そう、精神の摩耗を誤魔化して、我々は震えるそいつが落ち着くまで無言で待つ。
チッ、チッ、チッ、チッ……。
誰かの腕時計の音だけが、静かな廊下に響く。
「あ、あれは……あれは……植物じゃない……」
割りと早くに回復して見せた我々の仲間は、開口一番にそう告げる。
「どういうことだ?」
そう、この調査団のリーダーが問うと、そいつは今にも倒れそうな青白い顔で答える。
「あれは……血だった……脈、打ってた……」
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