8人が本棚に入れています
本棚に追加
「そっか、じゃあ僕もう帰るね。
また会えるといいな……」
そう言って颯太は教室から出て行こうとする。
「え、ちょっと待ってよ!」
私は急いで颯太を追いかけたが、大きくなった颯太は広い歩幅であっという間に扉の前に移動していた。
「じゃあね、お姉ちゃん」
扉が開かれ颯太がその向こうに消えていく。
「待って!」
追いかける私の目の前でピシャリと扉が閉じられた。
一瞬放心状態になった私だったが、今ならまだ間に合うかもしれないと思い直し、扉を開いて廊下に飛び出た……つもりだった。
「何これ……?」
扉の向こうは知らない建物の廊下だった。
窓ひとつ無く暗い廊下。
いや、私はここを知っている。
ここは近所の公民館の廊下だ。
廊下の奥の部屋から明かりが漏れていて、そこから小さく話し声が聞こえる。
私はそっとそこに近づくと中を覗いて見た。
「うそ……」
そこには少し小さい私と父がいて、父が近所の人と話をしていた。
その後ろには棺が置いてある。
だとすれば、ここは四年前ということになる。
――颯太が死んだ年。
最初のコメントを投稿しよう!