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「駄目だよ、ここに来ちゃ」
後ろから声が聞こえて振り向くとそこに颯太がいた。
今度は四年前の中学二年生の姿でそこに立っていた。
そして廊下の何も無い壁に手を掛けると横に引いて扉のように開けた。
空けた先は白くまぶしい空間が拡がっている。
「早く入って。
じゃないと戻れなくなる」
少し険しい顔でそう言われ、私は急いで扉に向かう。
入る直前で立ち止まってもう一度颯太を見た。
しかしそこにはもう誰も立っていなかった。
私は少し迷って扉の向こうへと踏み出した。
― ― ― ―
ビクンと体が震えて目が覚めた。
場所は教室、私は自分の席で眠っていたようだ。
「春香、起きろよ。
先生が見てるぞ」
隣から小さな声で裕也が話し掛けてくる。
寝ぼけ眼で裕也を見たら颯太の顔に見えた。
あれ?
そう思ってもう一度よく見ようとしたときに、目の前に立ち塞がった人影に視界を奪われた。
「前田さん、今寝てると来週のテストで困るわよ!」
国語の冷水先生が怒った顔で私を見下ろしていた。
私が謝り、周りからくすくすと笑う声が聞こえてくる。
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