扉の先で

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「ありがとう、じゃあこれ飲んだら帰るね」  私は目の前にコーヒーを見つけてそう答えた。 「送ってくよ」  その後帰ろうとした私に裕也が駆け寄ってきた。 この走り方、この優しさの感じ、確かに裕也なのだけれど、どこか颯太にも似ている。  やっぱりあなたが誰なのか、気になってしまう。  喫茶店を出るとき、また場所が変わると思って身構えていた。 だけど今度はそのまま出て二人で歩いていた。 「なぁ春香」 「なに?」 「最近さ、俺……どう?」 「え、何それ? どういう意味?」  唐突に変な質問をされて問い返す。 「えっとだから、俺ってどんな風に見える?」  そこで私は立ち止まって裕也を正面から見て固まってしまった。 だって、その顔は相変わらず颯太の顔だったから。  颯太の顔をした裕也は、少し不満があるような悲しそうなニュアンスを持った複雑な顔で、私を見つめていた。 「どうって、裕也は裕也だよ……」  私は驚いている自分を悟られたくなくて、目を逸らすと同時に足早に進みながら答えた。 「え、待ってよ!」  裕也が慌てて私に付いて来る。
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