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「変なこと訊いてごめん」
私が怒ったと思った裕也が謝ってきたので、私は立ち止まって振り向いた。
「別に怒ってないから……」
普通に言ったつもりが、自分でも不自然に聞こえた。
それからしばらく、気まずい思いのまま二人で無言で歩いて、私の家の近くまで来た。
「なぁ、今度いつ空いてる?」
「えーと、まだわかんないや。
またわかったら連絡するね」
「おう、じゃあまた明日学校でな」
「うん、じゃあまた明日ね」
お互いに手を振って、裕也が見えなくなってから私は玄関の扉を開いて中に入った。
― ― ― ―
扉が後ろで閉まる音がする。
私は雪の降る街角に立っていた。
服は厚手のコートに去年裕也に貰ったマフラー、といった完璧な冬仕様になっていた。
「ごめんお待たせ!
寒かっただろ?」
遠くから白い息を吐きながら裕也が走ってきた。
顔は……本当の裕也の顔だった。
「ううん、私も今来たから」
「そうか。
早くあったかいもの食べようぜ」
「……うん」
こういうさり気無い感じが裕也のいい所で好きだった。
早くプレゼントを渡したい。
そう思って私は微笑んだ。
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