扉の先で

9/13
前へ
/16ページ
次へ
「変なこと訊いてごめん」  私が怒ったと思った裕也が謝ってきたので、私は立ち止まって振り向いた。 「別に怒ってないから……」  普通に言ったつもりが、自分でも不自然に聞こえた。  それからしばらく、気まずい思いのまま二人で無言で歩いて、私の家の近くまで来た。 「なぁ、今度いつ空いてる?」 「えーと、まだわかんないや。 またわかったら連絡するね」 「おう、じゃあまた明日学校でな」 「うん、じゃあまた明日ね」  お互いに手を振って、裕也が見えなくなってから私は玄関の扉を開いて中に入った。 ― ― ― ―  扉が後ろで閉まる音がする。  私は雪の降る街角に立っていた。 服は厚手のコートに去年裕也に貰ったマフラー、といった完璧な冬仕様になっていた。 「ごめんお待たせ! 寒かっただろ?」  遠くから白い息を吐きながら裕也が走ってきた。 顔は……本当の裕也の顔だった。 「ううん、私も今来たから」 「そうか。 早くあったかいもの食べようぜ」 「……うん」  こういうさり気無い感じが裕也のいい所で好きだった。 早くプレゼントを渡したい。 そう思って私は微笑んだ。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加