第1章

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教室の戸を開けると、そこには全員俺が座っていた。 一斉に同じ顔に見つめられ、俺は鏡の世界に来たのかと一瞬思った。 どいつもこいつも、俺、俺、俺。 俺はあまりのことにパニックになった。 「え?なんで全員俺?」 やっと口からそんなマヌケなセリフが出てきた。 俺の一人が答えた。 「なんでって、君が望んだことだろう?」 俺は、ある言動を思い出して、あっと呟いた。 新学期が始まり、すぐに文化祭の出し物についての話し合いがあり、ありきたりなオバケ屋敷をやろうということになったのだ。 オバケ屋敷なんて、チンケな材料しか集まりそうもないし、どうせたいして怖いものなんて出来やしない。最初から気に食わなかった。 俺が反対意見を出すと、面倒くさそうに担任が俺に言った。 「じゃあ、高松は何かアイデアがあるのか?」 「メイドカフェとか。」 そう発言すると、周りから大ブーイングを受けた。 面倒くさい。調理はどうするんだ。衛生許可は?だいいち他のクラスが模擬店をやるからかぶる。女子からは誰がメイドをやるんだとヒステリーが飛ぶ。男子を女装させてやると言ったら男女とも両方から大ブーイングを喰らい、担任も保護者からの苦情を恐れて良い顔をしなかった。 結局安易なオバケ屋敷で意見は多数決でまとまってしまったのだ。ふん、面白みのない奴らだ。俺は面倒でもクラスの一員なので、その日から一応文化祭の準備に参加した。 ところがあれだけオバケ屋敷と盛り上がっていたにもかかわらず、いざ準備になると、皆のらりくらりとした。俺は割りと、無駄が嫌いな性格なので、くだらないことに時間が割かれるのがいやなのだ。 部屋を暗くするためのダンボール集めにしても、夕方遅くにスーパーなどに調達しに行くので、その頃にはすでにダンボールは清掃業者に回収されている。 「そういうのはあらかじめ、店に電話して確保してもらっておかなきゃダメじゃん。」 俺が苛立っても反感を買うだけで、女子にいたっては逆切れする始末。 ダンボールを回収できても、何も考えずに、窓にベタベタ貼るだけで光はだだ漏れ。これじゃあ明るすぎて話にならない。普通黒く塗ったり、光が漏れないようにダンボールの上に暗幕貼ったりするだろ。そんな文句をいろいろ言うと、じゃあ一人でやれば?とかわけのわからないキレ方をする。 馬鹿じゃねえの?お前らが望んだオバケ屋敷だろうが。
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