葵の章

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―――本物の、お城だ。 天下の江戸城。 歩をすすめて新しい廊下や庭、その景観が広がるたびに、 建物の荘厳さと絢爛さに息をのむ思いだった。 明け方だからまだ誰もいないけれど、 朝が来たらこの廊下を、 女中さんたちがぞろぞろと並んで歩くんだよね? 朝まで私、生きてるか分からないけど。 「ひゃ…っ!」 情けない声を出してしまったのは、 誰もいない部屋の敷布団に身体を投げつけるように放られたせい。 「…上様が異国の女に興味があると仰るから、  生かしておけば」 うえさま、ってこのお城で一番偉い人ってこと? 異国の女って私、日本人だけど… 「どうやら貴女には、躾が必要ですね」 ……やっぱり、拷問ですか。
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